インクルーシブ教育とは?なぜ必要?メリット・デメリットや現場のリアル

インクルーシブ教育とは、障害の有無にかかわらず、すべての子どもたちが同じ教室で共に学び合う教育のことを指します。近年、日本でも「共生社会」の実現に向けて注目されていますが、現場ではさまざまな課題も存在します。本記事では、インクルーシブ教育の必要性、特別支援教育との違い、現場のリアルな声を交えながら、そのメリット・デメリットや具体的な事例を紹介していきます。

インクルーシブ教育と特別支援教育の違い
概念と目的の比較
インクルーシブ教育は、障害の有無にかかわらず、すべての子どもたちが同じ場で共に学ぶことを基本理念としています。一方で、特別支援教育は、障害のある子ども一人ひとりに適した教育環境を整え、個別に支援することを目的としています。このように、両者は目的やアプローチが異なります。
インクルーシブ教育の理念と目的
インクルーシブ教育とは、「すべての子どもが共に学び、成長すること」を目的とした教育方針です。障害の有無や国籍、人種、言語、性別、家庭環境などに関わらず、一人ひとりが尊重される教育の場を目指します。
国連の「障害者の権利に関する条約」(2006年)第24条では、すべての障害児が「排除されない教育」を受ける権利を明記しています。この理念に基づき、日本でも文部科学省が「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築」を推進しています。
【インクルーシブ教育の目的】
- 障害の有無にかかわらず、共に学ぶことで相互理解を深める
- 多様性を受け入れる寛容さや協調性を養う
- 将来の共生社会を担う人材育成につながる
特別支援教育の理念と目的
一方、特別支援教育は、「障害のある子どもが個別のニーズに応じた適切な教育を受けること」を目的としています。発達の遅れや学習・生活に困難がある子どもに対し、障害特性に応じた専門的な指導を行う仕組みです。
【特別支援教育の目的】
- 障害のある子どもの能力や可能性を最大限伸ばす
- 自立や社会参加を目指し、生活スキルや学力を育む
- 一人ひとりの教育的ニーズに応じた柔軟な対応を行う
具体的な支援方法の違い
特別支援教育では、特別支援学校や特別支援学級に通うケースが一般的です。個別指導計画に基づき、きめ細かなサポートを受けられる一方、インクルーシブ教育では、通常学級での学びを基本としながら、必要に応じてサポートを行います。例えば、介助員が教室に常駐するケースもあります。
インクルーシブ教育の場合
- 通常学級に在籍しながら、必要に応じて支援を受ける
- 「合理的配慮」(個別に必要なサポート)の提供
- 特別支援教育支援員(介助員)やICT機器の活用
- ピアサポート(子ども同士で助け合う活動)
例)知的障害のある児童が通常学級で学びながら、困難を感じる場面では支援員が付き添い、視覚教材を活用してサポートする
特別支援教育の場合
- 特別支援学校、特別支援学級、通級指導教室などで学ぶ
- 個別の教育支援計画・個別指導計画を作成し、きめ細かな支援
- 小集団または1対1での個別指導
- 専門スタッフ(特別支援教育コーディネーター、言語聴覚士など)が配置されるケースも
例)自閉症スペクトラム症の児童が特別支援学級で視覚スケジュールを使いながら、学習活動や生活スキルの訓練を受ける
現場で混同されやすいポイント
現場では、「特別支援教育=分ける教育」「インクルーシブ教育=一緒に学ぶ教育」と単純化されがちですが、実際には両者が連携しながら柔軟に運用されています。このため、保護者や教育関係者が誤解しやすい点でもあります。
- 「分ける教育」=特別支援教育、「一緒に学ぶ教育」=インクルーシブ教育と単純に理解されることが多い
- 実際は、通常学級でのインクルーシブ教育でも特別支援教育の知見が必要
- 「できるだけ同じ場で学ぶ」ことを追求しつつも、子どもの状態に応じて「別室で個別支援」など柔軟に組み合わせるケースも多い
現場では「子どもの状態によって柔軟に学びの場を選べる」という「多様な学びの場」を用意することが重要視されています。

インクルーシブ教育のメリットとデメリット
子どもにとってのメリット
障害のある子もない子も、互いに理解し合い、協力する力を養うことができます。また、多様性を自然に受け入れる姿勢が身につくため、社会性の向上にもつながります。
障害のある子ども
- 地域の学校で友達と一緒に学ぶことで孤立感が減少
- 自己肯定感の向上、社会性の発達促進
- 日常生活や社会で必要な「コミュニケーション力」が育まれる
障害のない子ども
- 多様な人と接することで、思いやりや協力の姿勢が育つ
- 社会に出てからの「共生力」や「柔軟な対応力」が身につく
- 自分とは異なる価値観や背景を受け入れる姿勢が自然に培われる
保護者にとってのメリット
インクルーシブ教育は、子どもにとって多様性の中で成長できる貴重な機会ですが、保護者にとっても多くのメリットがあります。特に、障害のある子どもの保護者と、障害のない子どもの保護者では、感じる安心感や利点がそれぞれ異なります。ここでは、より具体的な視点から、保護者が感じるインクルーシブ教育のメリットについて掘り下げます。
【障害のある子どもの保護者にとって】
1. 地域の学校に通わせられる安心感
住み慣れた地域で、近所の友達と一緒に登下校できることは大きな安心材料です。送迎負担が減り、親も学校行事に参加しやすくなります。
2. 社会性や自信の成長に期待
健常児と自然に触れ合うことで、コミュニケーション能力や自己肯定感が育まれると期待する保護者が多いです。
3. 将来の社会参加につながる
共に学ぶ経験が、卒業後の就職や地域での生活で役立つ「人間関係づくり」や「協調性」を養う基礎になります。
4. 保護者同士のつながりが広がる
通常学級の保護者と交流が増え、「孤立しがちだったけど、話せる仲間ができた」と安心する声もあります。
5. 学校と密に連携しやすい
個別支援計画を通じて学校と情報共有しながら進められるため、「何かあってもすぐ相談できる」と信頼関係が築きやすくなります。
【障害のない子どもの保護者にとって】
1. 子どもの「思いやり」と「協力する力」が育つ
助け合いや支え合いの経験を通じて、「困っている人に自然と手を差し伸べる子になった」と実感する親が多いです。
2. 多様性を受け入れる姿勢が自然と身につく
「違って当たり前」と考えられるようになり、将来、職場や社会でも柔軟に対応できる力が育ちます。
3. 親自身も障害への理解が深まる
日常的に障害のある子どもや保護者と接する中で、「特別視しなくなった」「接し方に迷わなくなった」という声が増えています。
4. 地域全体で子どもを育てる意識が芽生える
学校・家庭・地域が協力し合う機会が増え、「子どもをみんなで支える」意識が保護者にも根付いていきます。
学校や教師側の課題
一方で、教員には多様なニーズに対応する高度な指導力が求められます。また、支援スタッフの不足や、学校設備のバリアフリー化が進んでいない場合もあり、現場負担が大きくなるケースも少なくありません。
1. 教員の負担増加
障害のある子にも配慮しながらクラス全体を見るため、授業進行や生徒対応の負担が大きくなっています。
2. 専門知識や経験不足
特別支援教育について十分に学んでいない一般教員が多く、「どう対応していいか分からない」と悩むケースが少なくありません。
3. 支援スタッフ・設備不足
支援員が足りない、バリアフリー化が不十分など、学校現場では「人も環境も足りない」という声が根強くあります。
こうした課題を乗り越えるためには、学校と保護者が互いに協力し合う姿勢が欠かせません。
デメリットや懸念される点
1. 障害のある子どもが十分なサポートを受けられない可能性
インクルーシブ教育では、障害のある子どもも通常学級で学ぶことが基本です。しかし、支援員の配置や教員のサポート体制が不十分な場合、「必要な支援が受けられず、取り残される」という不安が現実化することがあります。
【具体例】
・授業中に集中できず、ついていけなくなる
・クラスメイトに助けてもらってばかりで、自己肯定感が下がる
・教員が忙しく、相談したくても時間を取ってもらえない
特に発達障害や知的障害がある場合、周囲のペースについていけずに自信をなくしたり、学校に行きづらくなったりするケースも見られます。
2. 障害のない子どもが「授業が遅れる」と感じる場合がある
クラスに障害のある子どもがいることで、「授業の進行が遅い」と感じる子どもや保護者もいます。
【具体例】
・先生が特定の子ばかりに時間をかけていると、不公平感を抱く
・「なんで待たないといけないの?」と不満を感じる
・「わたしも頑張ってるのに、あの子ばかり褒められる」と不公平に感じる
こうした不満が蓄積すると、障害のある子どもに対して反感を持ってしまったり、場合によっては「いじめ」につながるリスクも出てきます。
3. 教員や学校側の負担増大
インクルーシブ教育を実現するには、教員に対して「クラス全員を見る力」と「個別対応する力」の両方が求められます。しかし、現場では「どちらも十分にできる余裕がない」という声が多く聞かれます。
【具体例】
・授業中に障害のある子の対応に追われ、他の子どもに手が回らなくなる
・「個別に対応してほしい」という保護者からの要望が増え、精神的な負担が大きい
・特別支援教育に関する知識や経験が不足しており、適切な指導方法が分からない
「頑張っているのに、うまくいかない」という焦りから、教員自身が疲弊してしまうケースも増えています。
4. いじめや差別のリスク
理想としては、「お互いに支え合うクラスづくり」が目指されています。しかし、現実には、「障害のある子が特別扱いされている」と見られたり、「できないことをからかわれる」など、障害のある子どもがいじめや差別に遭うケースもあります。
【具体例】
・言葉が出にくい子が「何言ってるかわかんない」と笑われる
・行動に時間がかかる子が「早くしろよ」と責められる
・障害のある子どもに対する「無視」や「仲間外れ」が発生する
特に、周囲に障害理解が浸透していないクラスでは、「どう接したらいいか分からない」という不安が無関心や差別につながることも少なくありません。
5. 保護者間での価値観の違いによるトラブル
インクルーシブ教育に対する理解や期待は、保護者によって温度差があります。障害のある子どもの保護者は「できるだけ一緒に学んでほしい」と願う一方で、障害のない子どもの保護者は「我が子の学力や安全が優先」と考えることもあります。
【具体例】
・障害のある子に手厚い対応がされることに不満を感じる保護者がいる
・「うちの子の授業時間が削られている」と学校にクレームが入る
・障害のある子の行動に対して「迷惑だ」と陰で言う親がいる
こうした不満が表面化すると、学校への苦情や保護者同士の対立に発展するケースもあります。
6. 卒業後の進路に対する不安
インクルーシブ教育の中でうまく馴染んでいても、「進学や就職はどうなるのか」と将来に対する不安を持つ保護者も少なくありません。
【具体例】
・進学先にインクルーシブな環境が整っていないケースも多い
・一般企業での受け入れ態勢が整っていない場合、就職でつまずくことも
・「学校では周りが支えてくれたけど、社会ではどうなるのか」と心配する声
学校を卒業した後、社会に出たときに支援が受けられず孤立するケースもあるため、「学校だけではなく、社会全体のインクルーシブ化」が求められています。

現場での成功事例と実践方法
小学校での取り組み例
ある公立小学校では、「すべての子どもにとって居心地の良い教室づくり」を目標に、インクルーシブ教育を推進しています。この学校では、障害のある児童も含め、すべての児童が安心して学べる環境を整えるために、以下の取り組みを行っています。
1. 支援員の常駐
通常学級に特別支援教育支援員を配置し、障害のある児童に対して、授業中や休み時間に必要なサポートを行っています。例えば、以下のようなサポートがあります。
- 授業中、黒板の内容をノートに写すのが苦手な児童に対し、隣でノートを補助してあげる
- 理科実験や図工などで手先の動きが不器用な子に、器具の使い方を個別にフォローする
- 移動教室や給食時に、周囲より少し時間がかかる子どもの移動をサポートする
支援員がいることで、担任教師はクラス全体に目を配りながらも、必要に応じて個別対応が可能になります。
2. グループ学習で「助け合い」を習慣化
授業では、グループ活動やペア学習を積極的に取り入れています。
「分からないことがあったら、まず隣の友達に聞く」というルールを設け、子ども同士で助け合う力を養っています。この仕組みにより、障害のある子どもが孤立せず、自然に「助けてもらう」「助ける」という関係が生まれます。
3. 保護者との連携強化
特に配慮が必要な児童については、学期ごとに保護者面談を実施し、学校と家庭で情報共有を密にしています。「子どもが困っていること」「家庭でできるサポート」などを話し合うことで、学校と家庭が一体となって支援する体制を整えています。
中学校・高校での実践例
中学校・高校になると、授業内容も複雑になり、生徒一人ひとりに合わせた学習サポートがより重要になります。そのため、ICT機器の活用や、部活動を通じた人間関係づくりなど、年齢に応じた柔軟な取り組みが求められています。
1. タブレット端末・ICT機器の活用
東京都内のある中学校では、発達障害や読み書き困難(ディスレクシア)などの特性を持つ生徒が、自分に合った学び方を選べるようにタブレット端末を導入しています。
- 板書をタブレットで撮影し、後から見直せるようにする
- 音声読み上げ機能を活用して、文章問題を耳で確認する
- タイピングで課題提出を行い、「書く」負担を減らす
ICTを活用することで、生徒自身が「自分に合う学び方」を見つけられ、自信を持って授業に参加できるようになっています。
2. 部活動での成功体験
高校では、障害のある生徒が部活動に参加することで、人間関係が広がり、学校生活に意欲が生まれるケースも多く見られます。
【事例】
軽度の身体障害がある男子生徒がバスケットボール部に参加。当初は「迷惑をかけるのでは」と不安を感じていましたが、仲間が「できることを一緒にやろう」とサポートしてくれたことで、「自分も役に立てる」という自信が芽生え、学校生活全般に積極的になりました。
部活動を通して、「障害があっても自分にできることがある」という成功体験を得ることは、生徒自身の成長に大きくつながっています。
教師や支援スタッフの役割
インクルーシブ教育を成功させるには、教師と支援スタッフが互いに役割を理解し、連携することが不可欠です。
教師の役割
- クラス全体を見ながら、一人ひとりに必要な配慮を行う
- 学習だけでなく、生活面でも困りごとに気づき、早めに対応する
- 障害のある子どもだけでなく、健常児にも「助け合う意識」を育む指導を行う
支援スタッフの役割
- 授業中の個別サポート(ノート指導、移動補助など)
- 休み時間や行事での見守り
- 教師が気づけない細かな部分をフォローし、必要に応じて保護者とも情報共有
教師と支援スタッフが協力し合うことで、「誰もが安心して過ごせる教室づくり」が可能になります。
成功につながった工夫とポイント
成功している学校には、いくつか共通する工夫があります。
1. 個別指導計画(IEP)の活用
障害のある子どもに対して、「どの場面で困りやすいか」「どんなサポートが必要か」を明確にした個別指導計画を作成。定期的に見直し、状況に応じて柔軟に対応することで、子どもも教員も安心して学校生活を送れるようになります。
2. 教職員間での情報共有
朝会や職員会議で、「今日は○○さんが疲れているようだから、無理せずサポートしていこう」など、教員同士が子どもの状態を共有しています。
3. 保護者との継続的な対話
「家庭でこんな様子がある」「学校ではこんな姿が見られる」と、お互いに情報を持ち寄りながら、長期的に子どもを支えていく姿勢が大切です。

保護者が知っておきたいインクルーシブ教育のリアル
普通学級での学びについていける?
「授業についていけるか心配」という声は多いですが、支援員やICT機器、学習プリントの工夫など、サポート体制が整っていれば可能です。
【例】
- 漢字テストが苦手な子には、事前にプリントで練習させる
- 休み時間に補習を行い、不安を解消する
学校と家庭で情報共有し、「無理なく、自分のペースで学ぶ」姿勢が重要です。
いじめや差別は大丈夫?
インクルーシブ教育では、「障害のある子もない子も共に学ぶこと」が理想とされていますが、現場ではいじめや差別が完全になくなるわけではありません。むしろ、障害のある子どもが目立ってしまったり、特別扱いされることによって、トラブルが生じるケースもあります。
1. 実際に起こりやすい場面と具体例
障害のある子どもが加わることで、健常児と違う行動が目に付く場面があります。例えば、
- 音読で言葉がつまってしまう → クスクス笑われる
- 作業に時間がかかる → 「遅い」「早くしてよ」と急かされる
- 休み時間に友達と遊べない → 一人ぼっちでいる姿をからかわれる
こうした「ちょっとした違い」がきっかけとなり、言葉の暴力や無視など、目に見えにくいいじめに発展することもあります。
2. 差別意識や無理解による孤立
障害について理解がない場合、「あの子は特別扱いされている」「注意されないのはズルい」といった誤解から、クラス全体で距離を置かれることもあります。
また、障害のある子ども自身も「自分だけみんなと違う」と感じることで、次第に登校しづらくなるケースもあります。
3. 保護者同士の摩擦につながるケースも
「自分の子どもが障害児のサポートをさせられてばかりいる」「授業が遅れる原因になっている」と感じる保護者が、学校や相手の家庭に不満を抱くこともあります。
こうした摩擦が表面化すると、家庭間でのトラブルに発展し、地域で孤立する原因になってしまう恐れもあります。
4. いじめや差別を防ぐために学校でできること
- 障害理解教育の徹底
学期ごとに「障害ってなに?」「困っている子にどう接する?」といった授業を行い、日常的に「助け合う意識」を育てます。 - いじめ早期発見システムの導入
「悩み相談箱」や「スクールカウンセラー面談」を定期的に設け、子ども自身が相談しやすい環境を整備しています。 - ピアサポート活動の推進
児童自身が「友達を助ける役割」を担うことで、「助けることが普通」という空気づくりを進めている学校もあります。
5. 保護者ができること
- 子どもの表情や態度を注意深く観察
「学校どうだった?」と聞いても、「別に…」と言うだけで、表情が沈んでいたり、急に「学校に行きたくない」と言い出したら注意が必要です。 - 先生に早めに相談する
「クラスでこんな様子があるようです」と伝えておくことで、学校側も早期に気づくことができます。
卒業後の進路や社会適応はどうなる?
インクルーシブ教育で「共に学ぶ力」を培った子どもたちは、社会で生きる力も育まれていますが、進路や就職については依然として不安を感じる保護者も少なくありません。
1. 進学時に直面する壁
中学校、高校までは「学校側の配慮」があり、周囲の友達もサポートしてくれていた環境でした。しかし、進学となると次のような課題が生まれます。
- 「高校でも同じように支援員をつけてもらえるか不安」
- 「受験制度に合理的配慮がどこまで認められるのかわからない」
- 「特別支援学校と普通高校、どちらを選べばいいか迷う」
近年は、受験時に「別室受験」や「問題文の読み上げ」など配慮が進んでいますが、学校ごとに対応が異なるため、情報収集と早めの相談が重要です。
2. 社会に出る際に直面する不安
障害のある子どもの保護者は、卒業後について「自立できるか」「働ける場所はあるのか」という点に大きな不安を抱きます。
- 「学校では友達に助けてもらえていたけど、社会に出たらどうなるの?」
- 「障害者枠で就職したとしても、長く働き続けられるだろうか」
最近では「就労移行支援」など、障害のある人が社会に出る準備をサポートする施設も増えてきました。早めに進路や支援制度について調べ、将来設計を考えていくことが重要です。
3. インクルーシブ教育で培われる強み
インクルーシブ教育を受けた子どもは、「人と助け合う力」「困ったときに周囲に頼る力」が育まれているため、以下のような場面で強みを発揮することがあります。
- 職場で同僚とうまく連携しながら仕事を進める
- 「できないこと」を無理に隠さず、「助けてください」と言える
ただし、社会全体がまだインクルーシブになりきれていない部分もあるため、「就職後も職場でサポートを受けられる環境」を意識して選ぶことが大切です。

インクルーシブ教育をより良くするために必要なこと
学校・家庭・地域でできるサポート
学校と家庭が定期的に情報を共有し、地域でも子どもを見守る体制をつくることが理想です。
学校:支援体制の充実
支援員配置や、ICT教材導入など、現場の負担軽減を進める必要があります。
家庭:オープンなコミュニケーション
子どもの小さな変化に気づけるよう、「今日はどうだった?」と日常的に声をかける習慣をつけることが重要です。
地域:温かく見守る環境づくり
子ども同士だけでなく、保護者同士や地域の大人が声をかけ合い、「みんなで育てる」姿勢を持つことが理想です。
海外の先進事例から学ぶ
北欧諸国では、支援スタッフの充実やICT活用が進んでいます。日本もこうした取り組みから学ぶべき点は多いです。
スウェーデン:クラスごとに複数の支援スタッフが常駐し、「全員ができるまで寄り添う」体制を整備
フィンランド:早期から発達支援員が関わり、学力差が広がる前にフォロー。ICT活用も進んでいます。
日本もこれらを参考に、「支援員増員」「柔軟な学び方」「学校と家庭の密な連携」を一層進める必要があります。
共生社会に向けた意識改革の重要性
「障害があるから特別」ではなく、「違って当たり前」という価値観を根付かせることが、真のインクルーシブ教育のゴールです。
保護者・教員・地域住民、すべての大人が「多様性を受け入れる姿勢」を示すことが、子どもたちにも伝わり、「共生社会」の基盤となるでしょう。

まとめ
インクルーシブ教育とは、障害の有無に関わらず、すべての子どもが同じ場で共に学びながら成長することを目指す教育のあり方です。この教育理念は、子どもたちが多様性を自然に受け入れ、互いに支え合う力を養うために大きな意義を持っています。
一方で、日本ではまだ発展途上の段階にあり、現場ではさまざまな課題や悩みも浮き彫りになっています。
しかし、一人ひとりが「違って当たり前」「困っている時はお互いさま」という意識を持って、一歩ずつ進んでいくことが、共生社会への確かな土台を築くはずです。
学校、家庭、地域社会が手を取り合い、「誰もが安心して暮らし、学べる社会」を目指して、これからもインクルーシブ教育をより良く進めていきましょう。