インタビュー調査の進め方完全版|種類ごとのやり方と手順をわかりやすく解説

インタビュー調査は、マーケティングや商品開発、サービス改善などで欠かせない手法です。顧客やユーザーの「生の声」を直接聞くことで、深いインサイトを得ることができます。しかし、「どのようにインタビューを進めればいいのか」「効果的な質問をどう作るのか」と悩むことも少なくありません。
この記事では、インタビュー調査の基本から実践的な手法、分析方法、最新トレンドまでを詳しく解説します。これを読めば、インタビュー調査を成功に導くためのノウハウがしっかりと身につくでしょう。
インタビュー調査の種類と特徴
インタビュー調査は、マーケティングや商品開発、サービス改善のために「ユーザーの生の声」を収集するための重要な手法です。アンケートや行動データだけでは捉えきれない本音や深層心理を直接聞き出すことができるため、調査結果に対する理解が深まります。
インタビュー調査には大きく分けて、デプスインタビュー(DI)、グループインタビュー(FGI)、オンラインインタビュー、オフラインインタビューの4つの種類があります。それぞれの手法には特性やメリット・デメリットがあり、調査の目的や対象者に応じて最適な方法を選ぶことが重要です。以下で各手法について詳しく解説します。

デプスインタビュー(DI)
デプスインタビュー(Depth Interview)は、1対1で行うインタビュー調査です。調査対象者と深く向き合い、詳細な意見や本音を引き出すことを目的とします。
1対1で深い意見を聞き出す方法
デプスインタビューは、対象者1人に対してインタビュアーが1人つく形で行われます。アンケートやグループインタビューでは得られない、個人的な意見や具体的な経験を掘り下げることが可能です。
- 新商品の使用感や満足度を細かくヒアリングする
- ユーザーの心理や購入に至った経緯を把握する
- 顧客の不満点や改善要望を明確にする
デプスインタビューでは、インタビュアーが相手に深く寄り添いながら、相手の感情や考えを引き出すことが重要です。そのため、対象者がリラックスして話せるような雰囲気作りも求められます。
実施手順と成功のコツ
デプスインタビューを成功させるには、以下のような手順を踏むことが重要です。
1. 導入(アイスブレイク)
インタビューの最初に、リラックスできる雰囲気を作ります。自己紹介や簡単な雑談を交えることで、対象者が自然体で話せるようにします。
2. 本題(深堀り)
本題に入ったら、具体的な質問を通じて深く掘り下げます。単に「はい・いいえ」で答えられる質問ではなく、「なぜ」「どのように感じたか」を引き出す質問を行います。
3. まとめ(クロージング)
最後に、話の内容を要約し、インサイトを確認します。対象者から「他に話しておきたいことはあるか」を尋ねることで、さらに深い意見を得られることもあります。
- 回答者の話をしっかりと聞き、共感を示す
- 「なぜ?」を繰り返して深掘りする
- 沈黙を恐れずに、対象者が答えを整理する時間を与える

グループインタビュー(FGI)
少数グループで行い新しい発見アイディアを生み出す方法
グループインタビュー(Focus Group Interview)は、3人〜8人程度の少人数グループで行う調査手法です。参加者同士が意見を交わすことで、相互作用(グループダイナミクス)が生まれ、新しい発見やアイデアが生まれることがあります。
たとえば、新商品のパッケージデザインについて「この色がいい」「このデザインだと目を引く」など、他の参加者の意見を受けて考え方が変わったり、新たな視点が生まれることがあります。
ファシリテーションのコツと注意点
グループインタビューでは、参加者の性格や発言のバランスが重要です。
1. 発言の偏りを防ぐ
積極的に話す人と消極的な人がいる場合、インタビュアーがバランスを取って全員に発言機会を与えることが重要です。「〇〇さんはどう思いますか?」と振ることで意見を引き出します。
2. 発言のコントロール
話が脱線した場合や、一人の参加者が話し続けてしまった場合には、インタビュアーが「では次の意見に移りましょう」などの声掛けを行います。
3. 対立を防ぐ
参加者同士の意見が対立した場合には「それぞれの意見に価値がある」ことを認識させ、冷静に意見交換を促します。

オンラインインタビュー
オンラインツールを使った効率的な方法
ZoomやMicrosoft Teamsなどのオンラインツールを使用したインタビュー調査も一般的です。オンラインインタビューは、時間やコストを抑えながら遠方の対象者から意見を得られるため、効率的な調査手法として活用されています。
メリット
- 移動コストや会場費が不要
- 録画・録音が容易
- 世界中の対象者に対応可能
デメリット
- 通信環境や音声トラブルが発生する可能性がある
- 対象者の反応(表情や態度)が読み取りにくい

オフラインインタビュー
対面での直接的なコミュニケーションの重要性
オフラインインタビューは、直接対象者と対面して行います。相手の表情や態度、声のトーンなどから得られる非言語情報を含めてインサイトを収集できる点が大きなメリットです。
トラブル時の対応策
- 会場の準備
事前に音響や照明、椅子やテーブルの配置を確認し、対象者が快適に話せる環境を整えます。 - スケジュール管理
交通機関のトラブルや対象者の遅刻を考慮して、余裕を持ったスケジュールを組みます。 - バックアップ体制
録音・録画機材が故障した場合に備えて、予備の機材やメモ用の紙を用意しておきます。
インタビュー調査の準備と計画
インタビュー調査を成功させるためには、事前準備と計画が非常に重要です。調査を実施する前に「目的を明確にする」「対象者を正しく選定する」「効果的な質問を設計する」といった基本的なポイントを押さえることで、調査の質が大きく向上します。
特にインタビュー調査は、対象者から直接得られる「質の高い情報」を集めることが目的となるため、無駄なく本質的な意見を引き出すためには計画段階での精度がカギを握ります。
ここでは、インタビュー調査を行う前に必要な準備と計画について詳しく解説します。
目的とゴールの明確化
インタビュー調査を行う前に、「何を知りたいのか」「何を解決したいのか」を明確にすることが不可欠です。目的やゴールが曖昧な状態で調査を開始すると、収集するデータが散漫になり、必要なインサイトを得られない可能性があります。
例えば、次のような目的が考えられます。
- 新商品のターゲット層のニーズを把握したい
- 既存商品の課題や改善点を明らかにしたい
- 競合製品との差別化ポイントを見つけたい
- 顧客満足度やブランドイメージを調査したい
目的が明確であればあるほど、調査内容や質問内容も的確に設計できます。
具体例
- 良くない例:「商品に関するお客様の意見を知りたい」 → 目的が抽象的でデータ収集が散漫になる
- 良い例:「新商品のデザインや価格に関して、ターゲット層(20〜30代の女性)がどう感じているかを明らかにする」 → 目的が明確になり、具体的なデータ収集が可能
目的が明確になったら、次に「何をもって成功とするか(ゴール設定)」を行います。
- 新商品の購買意欲を50%以上に引き上げるための改善点を抽出する
- 顧客満足度を80%以上にするための具体的な施策を見つける
目標設定(KPI)を行うことで、調査結果を具体的な改善や施策につなげることができます。
ターゲット(対象者)の選定
インタビュー調査の効果を最大化するためには、適切な対象者を選定することが重要です。
ターゲットが不適切だと、集めたデータの価値が低くなり、調査結果を施策に活かしにくくなります。
ターゲットを決める際には、以下のような属性を考慮します。
- 性別
- 年齢
- 職業
- 居住地
- 購買行動
- 価値観
たとえば、新しい化粧品のマーケティングを目的としたインタビューなら、ターゲットは「20〜30代の女性」であり、「日常的に化粧をしている人」に絞る必要があります。
リクルーティングの方法と注意点
ターゲットを明確にしたら、インタビュー対象者をリクルーティングします。リクルーティングの方法としては、以下のような手法があります。
- アンケートによるスクリーニング
→ 事前アンケートで属性を確認し、条件に合った人を選出 - SNSやクラウドソーシングの活用
→ InstagramやX(旧Twitter)などのSNS、クラウドソーシングサービス(ランサーズやクラウドワークス)を活用 - リクルート会社への依頼
→ 専門のリクルート会社に依頼して適切な対象者を選定
質問内容の設計
インタビュー調査の成否は、質問設計に大きく左右されます。質問が曖昧だったり、誘導的だったりすると、対象者が本音を話しにくくなったり、調査結果が偏ったものになる可能性があります。
効果的な質問の作り方
- 具体的な質問をする
→ 「最近の商品についてどう感じていますか?」
→ 「この商品のデザインや色についてどう感じますか?」 - YES/NOで答えられる質問に頼りすぎない
→ 「この商品を好きですか?」 → NG
→ 「この商品が好きな理由・嫌いな理由を教えてください」 → OK - 誘導的な質問を避ける
→ 「この商品、便利ですよね?」 → NG
→ 「この商品の使いやすさについてどう感じますか?」 → OK
開かれた質問・閉じた質問のバランス
- 開かれた質問:「どう思いますか?」「なぜそう感じますか?」
- 閉じた質問:「この商品は好きですか?」「購入したことがありますか?」
開かれた質問でインサイトを深掘りし、閉じた質問で客観的なデータを集めるバランスが重要です。
インタビューガイドの作成
インタビューをスムーズに進行させるためには、事前に「インタビューガイド」を作成しておくことが重要です。インタビューガイドには、以下の項目を盛り込みます。
- 目的とゴール:
→ 何を知りたいのか、どんなデータを得たいのか - 質問リスト:
→ 「導入→本題→まとめ」の流れに沿った質問を記載 - 進行スケジュール:
→ 所要時間、質問時間の目安 - 対象者への対応方法:
→ 発言しにくい場合の促し方や沈黙時の対応方法 - 注意点:
→ 話が脱線したときの対処法、否定的な意見への対応など
インタビューガイドがあることで、インタビュアーが緊張してもスムーズに進行でき、必要なデータを確実に収集できるようになります。
インタビュー調査の実施方法(種類別のやり方)
インタビュー調査を成功させるためには、準備や計画だけでなく、実施方法にも注意を払う必要があります。
対象者の心理状態や会話の流れに応じて柔軟に対応しながら、必要なインサイトを引き出すことが求められます。
また、インタビューの種類によって適切な進行方法や注意点が異なるため、それぞれの特徴を理解し、状況に応じた方法を選ぶことが重要です。
ここでは、デプスインタビュー、グループインタビュー、オンラインインタビュー、オフラインインタビューそれぞれの具体的なやり方とポイントについて詳しく解説します。
デプスインタビューのやり方
デプスインタビュー(Depth Interview)は、1対1で行われる調査方法です。
対象者と直接対話することで、アンケートなどでは得られない深層心理や本音を引き出すことが可能です。
デプスインタビューの流れ

①導入(アイスブレイク)
インタビューの始めに、対象者の緊張を和らげることが重要です。自己紹介を行い、雑談を交えながら信頼関係を築きます。
- 「本日はご協力いただきありがとうございます。」
- 「リラックスしてお話しください。」
対象者が自然体で話せる雰囲気を作ることで、より正直な意見を引き出しやすくなります。
②本題(深堀り)
本題に入ったら、以下のような「なぜ?」を掘り下げる質問を中心に進めます。
- 「この商品を知ったきっかけは何ですか?」
- 「購入した理由を教えてください。」
- 「その時に迷ったことはありますか?」
対象者の言葉に対して、「それはどうしてですか?」と問いかけることで、具体的な背景や感情を引き出します。
- 「それを選んだ理由をもう少し詳しく教えてもらえますか?」
- 「その時に他に検討した選択肢はありましたか?」
インタビュアーが共感を示しながら聞き手に徹することで、対象者が本音を話しやすくなります。
③まとめ(クロージング)
最後に、インタビュー内容を要約し、対象者に確認します。
- 「本日は貴重なお話をありがとうございました。」
- 「お話しいただいた内容を元に改善につなげたいと思います。」
- 回答者の話に割り込まない
- 質問をしすぎて圧迫感を与えない
- 沈黙を恐れず、相手が考える時間を与える
グループインタビューのやり方
グループインタビュー(Focus Group Interview:FGI)は、3人~8人程度の小グループで行われます。
参加者同士が意見を交換することで、新しい視点や洞察が生まれることが特徴です。
グループインタビューの流れ
①導入(アイスブレイク)
- 参加者に自己紹介をしてもらい、リラックスした雰囲気を作ります。
- 「気軽に発言してください」「他の方の意見を否定しないようにお願いします」などのルールを説明します。
②本題(ディスカッション)
- まず全員に意見を求める
- 参加者の発言が偏らないように注意
「○○さんはどう思いますか?」と特定の参加者に意見を促すことで、発言が偏ることを防ぎます。
- 意見が対立した場合には「両方の意見に価値がある」と伝え、冷静な議論を促します。
- 「そのことについて、他の方の意見も聞かせてください」と問いかけることで、議論を深めます。
③まとめ(クロージング)
- 重要な意見や結論をまとめて確認
- 「この中で印象に残った意見はありますか?」と問いかけて振り返る
- 発言者が偏らないように全員に意見を振る
- 話が脱線したら「一度まとめますね」と軌道修正
- 他者の意見を否定しないよう注意
オンラインインタビューのやり方
オンラインインタビューは、ZoomやTeamsなどのビデオ会議ツールを使用して行われます。
物理的な移動が不要なため、コストや時間を削減しやすいのがメリットです。
オンラインインタビューの流れ
①導入(接続確認とアイスブレイク)
- 通信状況や音声を確認
- 画面共有機能が必要な場合は事前に確認
②本題(質問)
- デプスインタビューと同じ流れで進行
- 通信遅延や音声の乱れがないかを確認
③まとめ(クロージング)
- 重要なポイントをまとめて確認
- 「本日はありがとうございました」と感謝を伝える
- 画面越しで相手の反応が読み取りにくいため、表情や声のトーンに注意
- 通信トラブルが起きた場合のバックアップ手段を用意
オフラインインタビューのやり方
オフラインインタビューは、直接対象者と対面して行われます。
非言語情報(表情、態度、ジェスチャー)も読み取ることができるため、より詳細なインサイトを得られることが強みです。
オフラインインタビューの流れ
①導入(アイスブレイク)
- 会場を整備し、快適な環境を用意
- 初対面の緊張を和らげるために雑談を交える
②本題(質問)
- 目線や声のトーン、ジェスチャーにも注目
- 言葉に詰まった場合は「ゆっくり考えてください」と促す
③まとめ(クロージング)
- 内容をまとめて確認
- 回答者の表情や態度から満足度を確認
- 目線を合わせて話す
- 同席者がいる場合は、発言機会を均等に与える
- 非言語情報(視線、態度)から本音を読み取る

まとめ
インタビュー調査は、顧客やユーザーの「本音」や「深層心理」を直接引き出し、マーケティングや商品開発に役立つ重要な手法です。デプスインタビュー、グループインタビュー、オンラインインタビュー、オフラインインタビューといった手法にはそれぞれ特徴があり、調査の目的や対象者に応じて適切に選ぶことが重要です。
効果的な調査には、明確な目的設定、適切な対象者の選定、効果的な質問設計が欠かせません。インタビュー中はリラックスした雰囲気を作り、相手の話を傾聴しながら深掘りすることで、より価値あるインサイトを得ることができます。
得られたデータを正確に整理・分析し、具体的な改善や戦略に活かすことで、インタビュー調査の成果を最大化できます。目的に応じた手法と実施方法を理解し、質の高いインタビュー調査を行いましょう。